洗面器二杯分の恐怖…!建築士が実体験から語る「シロアリの群飛」と中古住宅の対策

シロアリ駆除を行う会社から、プレスリリースと称した広告案内のメールが届きました。

「少しずつ暖かくなるこの時期は『群飛(ぐんぴ)』の時期なので、シロアリ対策は今がお薦め!」という内容です。そこには「従来の合成殺虫剤ではなく、ホウ酸を主成分とした薬剤が良い」と書かれていました。

ホウ酸での処理が良いというのは多くの方がご存じの通りで、私自身が設計・監理をお願いする際にも、ホウ酸を主成分とした薬剤での処理を指定しています。そのため内容には大いに賛同できるのですが、私が今回気になったのは、そこではなく、広告にあった「群飛(ぐんぴ)」という言葉のほうです。

実は私には、この「群飛」にまつわる忌まわしい過去があります。今でも「シロアリの群飛」と聞くだけで、軽く鳥肌が立つほどです。

突然やってくる「シロアリの群飛」とは?

シロアリの群飛とは、繁殖や巣を分かつために、一部のシロアリが羽アリへと姿を変え、何千匹単位で一斉に飛び立って移動する現象を言います。実は私、この恐ろしい現象を、以前自分が住んでいた部屋で直接体験したことがあるのです。

当時私が住んでいた木造アパートは、築40〜50年は経つ古い建物でした。玄関扉を開けると約4畳のキッチンがあり、そこに面して浴室とトイレの扉が並ぶ間取りです。浴室は昔ながらの在来工法(モザイクタイル張り)で造られており、木製引き戸の下枠には約90mmの角材、その上にレールが設けられていました。

しかし、その90mmの木材はすでに腐り果て、下に向かって大きな穴が開いていたのです。冬になるとそこから冷たい風が流れ込んでくる状態だったので、間違いなく床下と直接繋がっていたのだと思います。

玄関を開けると、そこは…洗面器二杯分の惨劇

ある日の夜。仕事から帰って玄関を開けると、あたり一面に大量の虫の死骸が散乱していました!

足の踏み場も無いほど、ビッシリと大量の虫が死んでいるのです。そのどれもに羽が付いており、ひとめでシロアリの類だと分かりました。

死骸は床だけではなく、流し台の上やガス台の上、開け放していた棚の中までもをビッシリと埋め尽くしていました。

私は玄関扉を開け、電気を付けたままの状態で、本当に立ち尽くしてしまいました。頭が真っ白になるとは、まさにあのことです。何が何だか分からず、ただ呆然とするしかありませんでした。

その後、意を決して死骸を片付けましたが、かき集めた羽アリは、洗面器二杯分ほどあったと記憶しています。

後年、シロアリ駆除の業者さんにこの話をしたところ、「それはきっと、ヤマトシロアリかイエシロアリのどちらかの群飛でしょうね」と教えてもらいました。

中古住宅を買うなら、シロアリ対策だけは最優先で

最近、中古住宅のインスペクション(現況調査)のご依頼をお引き受けすることが増えました。

その際、床下にシロアリの痕跡が無かった場合でも、私は必ず「シロアリ駆除(予防)の薬剤散布の大切さ」をお伝えするようにしています。しかし、目に見える被害がないためか、たいていの方はすぐには対応されないのが実情です。

中古住宅の購入やリフォームでは、何かと物入りになることは重々承知しています。暮らしに合わせた優先順位をつけることも大切です。

しかし、室内でシロアリの群飛を体験し、あの「洗面器二杯分の死骸」を見た者としては、実感としてこれだけはお伝えしたいのです。

「シロアリ対策だけは、どうか優先してやっておいたほうが良いですよ」と。

以上、私のシロアリ群飛の思い出でした。