家は完成したのに何かが足りない
家を新築し、無事に完成したのに、どこか満たされないという声を聴くことがあります。
「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、これは本当の話です。
家を建てる前に散々調べて、希望した性能も設備も、その通りに実現した。十分なはずなのに、「なんだか思い描いていた暮らしと違う」と感じる人がいるのです。
いったいなぜ、そんなことが起きるのでしょうか。
今回は、そんな「違和感の正体」に触れてみたいと思います。
原因は家を『建物』だけで考えていること
最近はC値や断熱等級など、住宅の性能に注目が集まっています。
ネットを見ても、ハウスメーカーのカタログを調べても、とにかく家の性能が高いことが大切で、「その性能を担保する家です」ということが、最大のセールストークのように記されています。もちろん、高性能住宅を否定するつもりはありません。性能は大切です。
ただ、その性能を高めることだけに予算を集中させてしまうと、最後にしわ寄せが来るのが、カーテンや照明器具、家具、そして外構工事だったりします。
私が経験した中に、こんな話がありました。
以前、私が御提案した計画案を地域のビルダーに持ち込み、建設を依頼された方がいました。計画の途中で、プランだけが流用されたのです。
その後、実際に建てられた家を、偶然その土地の前を通りかかった際に見ました。
建物は私が描いた通りの形で完成していました。
しかし、完成から一年ほど経っているにもかかわらず、外構工事は行われていません。玄関前は土のままで、駐車場には古いカーペットが敷かれていました。
おそらく、車の出入りで泥を引き摺るのを避けるためだったのでしょう。
道路に面した大きな窓にはカーテンが吊られていましたが、丈が短く、寸法が足りていませんでした。
室内を見たわけではありませんが、それでも何となく想像はつきました。
しかし、家づくり全体としての予算配分は、うまくいかなかったのだと想像します。
「箱だけをつくって、あとはすべて別途工事」という形だったのかもしれません。
これは極端な例ですが、他にも庭木一本を植える余裕もなく、引き渡された家を少なからず見てきました。
設計中には、きっと内装にもこだわったのでしょう。ところが、カーテンやエアコンは別途工事。
カーテンは市販の量産品を購入し、気密性能にこだわった外壁には、竣工後に町の家電屋さんが、何の配慮もなくドリルで穴を開けてエアコンを設置する。
あれほどこだわったC値とは、一体何だったのでしょう。
それが、本当に望んでいた建物だったのでしょうか。
住まいは家が完成した時ではなく、暮らしが始まってつくられていくもの
外構は、家の付属品ではありません。住まいの大切な一部です。
カーテンから入る光。
窓から見える緑。
庭に植えた木がつくる木陰。
季節によって変わる風や光。
こうしたものが、図面には描ききれない心地よさをつくります。
家は単なる箱ではなく、暮らしの舞台です。

例えば小田原であれば、海から抜けてくる風を感じたり、窓の向こうに山の稜線を借景として取り込んだりすることもできます。
それは、建物の性能表には書かれていません。
けれど、そこで暮らす人にとっては、確かな「住み心地」になります。
家は街の中に建つものです。
敷地の中だけで完結するものではありません。周囲の景色や風、光、街並みとのつながりまで含めて考えてこそ、本当の意味で「良い家」になるのだと思います。
ならば『質の高い小さな家』にしてはどうでしょう
予算配分に悩んだとき、もしかすると家を少しだけコンパクトにすることで、その分を建物の品質や素材、家具、カーテン、照明、外構などに回せるかもしれません。
建物だけを完成させるのではなく、暮らし全体を整える。
それが、本当の意味で満足できる家づくりにつながるのだと私は考えています。
建物だけではなく、外構も含めて考える。
そして、住み始めてから何十年も続いていく暮らしまでを考えて設計する。
そのことを、家を建てる前に知っておいてほしいと思います。
それが、私が考える「快適な家づくり」の第一歩です。
家づくりについて、こんなことを考えていませんか?
- 建物と外構を、どういう予算配分で考えればいい?
- 性能と広さ、どちらを優先すればいい?
- 小さな家でも、豊かに暮らせる?
- まだ建てるかどうか決めていないけれど、誰かに相談してみたい。
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執筆者:安井 俊夫(天工舎一級建築士事務所 代表)
「自分たち家族は、この先どんなふうに生きていきたいのか」
ご家族の想いを大切にし、時間が流れて変化していく慣れ親しんだ物理的な器としての家づくりを、お手伝いしています。小田原周辺での住宅設計や、日々の積み重ねを大切にした無理のない省エネリフォームなど、住まいに関するご相談は、お気軽にお寄せください。
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