『ぎょらん』町田そのこ 著

たまにはミステリ小説のように、人が死なない話を読もうと手に取った一冊。でも人が死ぬ話でした。

人が死ぬ際に遺族や大切な人へ想いを残す。それは赤い小さな玉の形をしており、まるでイクラの卵のようにも見えることから「魚卵=ぎょらん」と呼ばれていた。その珠を噛み砕くと、死んだ人の想いを感じることが出来るという話を信じる人たちと、その人たちが感じていた大切な人の死への後悔や想い。そんな人たちの想いを描いた連作短編集7話が収録されています。

物語は葬儀社の人物たちを中心に描かれています。その葬儀社の名前が「天幸社」。

私の事務所『天工舎』と同じ響きの名前に、驚きつつも不思議な縁を感じて読み進めました。

「ぎょらん」の秘密は読まれた方自身、一人ひとりの納得の仕方があると思うので、読んで納得されることをお薦めします。

私も大切な友人たちを亡くしています。

彼ら彼女らに対して私が想っている後悔や反省を、彼らはどんな風に感じているのだろうかと思い悩んだこともありました。

でも誰かが亡くなるということは、その人の考え方を知ることが出来なくなると言う事だと、この歳になれば理解しています。

「ぎょらん」とは残された人たちが、故人に対しての想いを具現化した珠なのでしょうね。

そんなことを感じさせてくれる一冊でした。


安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。