『冷たい家』JP・ディレイニー 著/唐木田みゆき 訳

世界的に活躍する天才建築家、エドワード・モンクフォード。彼は究極のミニマリスト建築の第一人者であり、彼が設計したロンドンの一戸建て住宅が物語の舞台となります。現在は賃貸住宅として貸し出されている、この「フォルゲート・ストリート一番地の家」を借りるためには、いくつもの制約を守らなければならず、テストと建築家本人による最終面接をクリアする必要があります。

さらに、この家には建築家モンクフォードの亡くなった妻と子が埋葬されているという曰く付きの建物。曰くは他にもあり、この家に入居することを許されるのは、なぜか女性ばかり。そして、そこに住んだ女性たちには、次々と厄災が訪れます。建築家モンクフォードの正体は、この家に隠された秘密とは――。

物語の話はひとまず置いておくとして、早川書房のポケミスって、カッコイイですよね、と昔から思っています。

日本の文庫本サイズとは少し違う、新書版の縦長サイズ。紙は薄いクリーム色のような色をしていて、紙質も外国のペーパーバックを思わせるような感じです。薄いビニールのカバーが最初から掛けられていて、もう手に持っているだけでオシャレです。

表紙のデザインにも一貫したこだわりがあり、この本だけは絶対にカバーを付けて読んだりしない本です。

また、すべての本に通し番号が振られているところも、なんとも魅力的。ちなみに、この『冷たい家』は1924番。

ポケミスを本棚に並べると、それだけで本棚の格が一段上がったような気になっていた、そんな思春期を過ごしていた想い出があります(笑)。

とまぁ、ポケミスの話はそれぐらいにして、本書に登場する最新鋭のミニマリスト住宅は、少し前に流行った「断捨離」ブームへのアンチテーゼにもなっているようです。

だいたい、家の中にはコンセントも照明のスイッチも、壁に絵を掛けるためのフックも、棚板の一枚さえありません。

本当に何もない、プレーンで無機質な空間。それでいて、住む人が望むことは音声や行動から推察され、家そのものが勝手に作動します。

本の中身に関しては、まったく触れていませんが、非常に好きです。映画化されているようなので、映像でも観てみたい一冊でした。


安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。