『9人はなぜ殺される』ピーター・スワンソン 著

閉じた空間や孤立した環境の中で事件が起こり、犯人も被害者もその場にいる人物に限られる――それが「クローズドサークル」と呼ばれるミステリのひとつのジャンルです。

有名なところではアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』、あるいは綾辻行人氏の『十角館の殺人』などがあります。どちらも驚愕のオチが待っているので、未読の方は是非ご一読を。

本書『9人はなぜ殺される』は閉じていない空間での、新しい形のクローズドサークル作品と言っても良いでしょう。

物語は9人の男女に差出人の無い手紙が届くところから始まります。中には自分の名前の他に、知らない8人の人物の名前が書かれた手紙が一枚。手紙を受け取った9人は全米の各地に住む、何の繋がりもない人物たち。

ある人はその手紙をイタズラだと思いゴミ箱に捨て、ある人は妻に浮気を疑われる。だがその中に名前の書かれた人物のひとりが死に、そしてまた一人殺される――という感じの話。

どうやって、この手紙が事件だと繋げていくのかと思っていたのですが、名前の一人がFBIの捜査官だったのです。そしてこの人物が手紙には何か意味があり、事件の予告ではないかと推理して動き出します。

また作中でクリスティの『ABC殺人事件』や『そして誰もいなくなった』に言及するメタの要素もあるので、好きな人にバッチリはまる作品です。

一つだけ難を言えば外国作品に多いような気がするのですが、話が本筋とは違う部分に触れる蛇足が多いような気がします。

もう少しテンポよく、あるいはボリュームが減ったら、もっとサクサクと読めるのに……と、思った点だけが残念でした。

クローズドサークル作品が好きな方なら、手に取ってみても損はない一冊だと思います。


安井俊夫|天工舎一級建築士事務所
一級建築士・『建築トリック謎解きガイド』著者。建築や暮らし、本について日々感じたことを書いています。