Essay 165 照明器具、それで良いの?

照明計画をしている。数多く存在する有名所の照明メーカー、そしてそれぞれに自慢のデザインを誇る無数の照明器具。その星の数ほど存在する器具の中から、たった一つ、「この空間、この場所」に相応しい照明器具を選ぶ。なぁ~んてオーバーな話でもないんですけど、時間と手間が掛かる作業な事だけは確かです。


もともと建物の基本計画をする場合、大抵の設計者は頭の中に建物全体のイメージみたいな物を描きます。この段階で、おぼろげながらでも照明の印象や、窓の感じをイメージするもの。だからそれを具体的に選べば良いだけの話なんですけどね・・・・・・たぶん。


とは言っても実施設計の段階では、印象やイメージだけでは済みません。だって予算が絡むでしょ?ですから照明計画には、二つの目的が有ると言うことになりますね。


一つは室内の仕上げや、雰囲気に合う照明器具を具体的に選ぶ事。(これ当たり前) もう一つは、照明器具のコストバランスを調整すること。つまり金額ですよね。


建物の全体工事費から考えて、照明器具代に掛けられる予算は、自ずと決まってきます。私の拙い経験から言えば、全体予算の2~3%と言う所じゃないですかねぇ。もう少し幅を持たせても、2~4%程度が良いところだと思います。


例えば工事費2000万円の建物なら、照明器具代は40万円から60万円なんて感じでしょうか?もっとも天井の高さが6~7mも有るようなリビングで、ナイトガウンなんぞを羽織りながら、ブランデーをクルクル回すクライアントが、お気に召すようなシャンデリアならば、それ一つで200万はするでしょうが、残念ながら、そう言うクライアントにお会いした事が無いもので。


逆に「今のアパートにぶら下がってる、ディスカウントショップで買った器具を付けて欲しい!」なんて言う、節約術を身に付けたクライアントなら、時々お会いするのですが。


まぁ冗談は兎も角、そんな照明器具を選ぶ時には、二つの選び方が有ると思います。一つは照明器具自体を一つのアイテムと捉え、見せる事に耐えられる器具を選ぶこと。大抵の場合、この選び方が多いですよね? ただし、こう言う考え方で器具を選ぶと、当然金額の高い器具を選ぶ事になりがちです。


もう一つの方法は、照明器具よりも光そのものを大切に考える事。この場合、器具は安価な物を選び、隠して見せなくするか、見せても違和感の無いデザインを心掛ける方法で対処できる筈。 この時、器具代は大幅に安くなる可能性が有ります。



はだか電球

例えば、こんな裸電球。
これ器具代として考えれば290円。 
勿論、電球込みの値段ですが、使い方次第に拠っては、これで十分デザインできると思います。

今工事中の建物は、このような照明器具を使っているので、その器具代は総予算の0.5%を切ってます。
それでも充分、鑑賞に堪えうるデザインにしているつもりです。


こうして浮いた予算を他に回すも良し、また徹底したローコスト化を図るも良し・・・・・じゃないでしょうか?


ただしこう言う考え方は、マンションや建売住宅では出来ないと思います。 既に完成している建物の場合、「ここにペンダントをぶら下げて、ここにスタンド置くべし!」と決められた位置に、想定された器具だけを取り付け可能な状態に造られているからで、後から全然違う考え方を持ち込もうとするのは、些か無理が有るようです。


安価な蛍光灯や裸電球も、それ自体の見せ方次第で、充分使用に値する物。まして設計者が、そこに何らかの意図を加えたなら、それはもう立派な照明器具と成り得るでしょう。


家を考える時、間取や内装に拘りを持つことは大切な事ですが、そこに付加される照明器具一つで、より完成度の高い空間になる場合も有れば、全てがパアになる場合も有ります。


全てに気を配るということは、とっても大変な事では有りますが、必要な事でもありますよね。
できれば自分で照明器具を作ったりして、楽しみながら家を考えられると良いですよね。


※チョッと洒落た照明器具を作るのは、意外と簡単なのですが、それはまた次の機会に。。。

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