上棟直後からの突貫工事で良い家が建つのだろうか?


道路と線路を挟んだ向こう側で、住宅の新築工事が行われている。
都市計画道路が決定し、道路を拡幅する計画があるせいだ。
道路用地にあたる家は立ち退き、土地の一部が候補地となる家は
建て直しが始まっている中の一軒の家。

建てているのは地域のハウスメーカー、名前は聞いたことがある会社。
この会社の大工さんが、よく働くという話。
朝は7時過ぎから仕事をはじめ、夜は8時過ぎてもトントンと叩いている。
日曜だって、ほとんど平日と同じような時間帯で仕事をしている。

いや、本当によく働く。
これだけ熱心に働くハウスメーカーなら、きっと良い家が建つに違いない。
……なんて感じで、世間が評価すると思っているのだろうか?
少なくとも私は評価しない。

まずマナーとしての話。
ご近所さんが迷惑していることに、気が付かないのだろうか?
勿論、一日中現場に監督さんが、張り付いて居るわけではないだろう。
(監督と言う職種の人が居れば? の話だが)
だから仕事をしている時間を、知らないのかもしれない。
大工さんが勝手に早出をして、勝手に残業しているのかもしれない。
……いや、そんな筈はないよね。

現場の工程は監督が立て、その予定に合わせて
各職方が仕事をするのが一般的な仕事の流れ。
たがら大工さんが頑張るという事は、「その短期間で仕事をしなさい」と指示され
それに従っていると考えるのがふつう。
野中の一軒家を建てているのなら話も分かるが
住宅地のど真ん中で、そんな時間で仕事をするとなると
建物の質にも疑問が生じるってもの。

仮に工期が無いから、長い時間仕事をしているという理由なら
単純に大工さんの人数を増やせば解決できる話。
でも一人で長い時間仕事をするという事は、
大工さんの手間賃が安いから、一日も早く工事を終わらせたいのだろうと考えてしまう。

建物の工事費が、一般的に考えても安い家と言うのは
多くの場合、安価な材料で造られているか
職人さんたちの手間賃を低く抑えて、なおかつ短期間で完成させ
掛かる経費を抑え込んでいるかの、どちらか。
このケースは後者ではないかと思うわけ。

勿論、会社の技術力や効率的な作業によって
価格を抑えている良質なハウスメーカーも、多々あるだろうが
そんな効率的な会社ならば、けして朝早くから夜遅くまで
しかも日曜も祭日も休みなしで、工事などする筈がない。

しかし予想外の悪天候や、材料の調達などに問題が生じて
どうしても工期に追われる事態が無いわけではない。
私にだって、そんな経験はある。

だけど工期に追われて現場が残業する場合とは
躯体と呼ばれる大工工事の時期ではなく、完成直前の仕上げ工事と呼ばれる場合がほとんど。
工事が始まったばかりの大工工事で、すでに工期が大幅に遅れている筈が無いのだから。

つまりこの家のように、上棟直後から日曜祭日関係なく
早朝から夜遅くまで大工工事をしているのは、どう考えても近隣への配慮など無いし
建物の質に対しても疑問符が生じる。


ま、周辺の家から顰蹙を買うようなことになると
工事が完成した後に、そこに住まれる方が可哀想なことになる可能性もあるから
そこら辺りを考慮して、上手くやって貰いたいと同業者としては思うのです。

そして自分が担当する現場も、ご近所への対応には気をつけなければと
あらためて思うわけです。

家は高い買い物です。
ことわざに「安物買いの銭失い」というのがあるが
物には適切な価格があり、確保しなければいけない質があります。
勿論、低価格高品質は理想ですが、軽自動車の価格で最高クラスのベンツは
買えないことも、理解する必要はあると思うのです。

「間違えた! いいや、もう一軒建てよう!」と、言える人は良いのですが
そう言えない人は、よく考えてみることが大切だと思います。

それにしても日曜の朝早くから工事するのは、なんとかならないかな……。
上棟後の様子
(上の写真は参考写真で、ここで書いた現場の写真ではありませんので)

 

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